Azure AI Translator は、 Azure の高精度な AI翻訳サービスです。近年のビジネスでは、多言語対応が求められるシーンが増えつつあります。翻訳作業にかかる時間やコストを削減するためには、 AI 翻訳サービスの導入がおすすめです。
この記事では、 Azure AI Translator の機能や価格、 API の種類、使い方について詳しく解説します。多言語対応を検討中の人は、ぜひ参考にしてみてください。
Azure AI Translator ( Azure AI 翻訳)とは
Azure AI Translator は、 Microsoft 社が提供する Azure の AI サービスの一つです。テキストやドキュメントをリアルタイムに翻訳でき、サポートする言語は 100 以上です。
Azure AI Translator を活用すると、母国語が異なる従業員同士をはじめとして、業務におけるさまざまな人同士の会話が円滑になります。コールセンターやチャットボット、アプリ内の通信など、さまざまなコミュニケーションにおいて多言語化が可能です。
また、特定のタスク向けに設計されたコンピュータ言語(ドメイン固有の用語)の翻訳にも、 Azure AI Translator が役立ちます。
Azure AI Translator の機能
Azure AI Translator には、テキスト翻訳・ドキュメント翻訳・カスタム翻訳という 3 つの機能が搭載されています。それぞれの機能を使ってできることを解説します。
テキスト翻訳
Azure AI Translator のテキスト翻訳とは、サポートされているソース言語からターゲットの言語へのテキスト変換を、リアルタイムで実行する機能のことです。固有名詞や製品名のような複合名詞については、翻訳方法のカスタマイズも可能です。
また、コードやブランド名のような翻訳しても意味がない語句については、翻訳を防止して自然な文章となるように調節できます。翻訳したくない語句には、 Translator API で「 notranslate 」のタグを付けてください。そうすると、指定した語句のみ翻訳を防止できます。
ドキュメント翻訳
ドキュメント翻訳には、非同期バッチドキュメント翻訳と、同期ドキュメント翻訳の 2 種類があります。どちらも元のドキュメントの構造と形式を維持したまま翻訳可能です。
非同期バッチドキュメント翻訳は、大きなファイルや複雑なファイル、複数のファイルをまとめて翻訳する際に適しています。翻訳に使用する用語集(用語の定義一覧)の作成も可能です。非同期バッチドキュメントを利用する際は、翻訳前後のファイルを保存するためのコンテナを Azure Blob Storage 内に用意しておく必要があります。
同期ドキュメント翻訳は、 1 ページのみのファイルを翻訳する、汎用の用語集にもとづき翻訳する、といった簡単な翻訳に向いています。また、同期ドキュメント翻訳の際は、 Azure Blob Storage 内にコンテナを用意する必要はありません。
カスタム翻訳
Azure AI Translator のカスタム翻訳とは、ユーザー独自にカスタマイズされた翻訳モデルを作成する機能のことです。
ユーザーが用意した翻訳データを AI に学習させると、ビジネス固有の用語や業界特有の言葉を適切に翻訳できるようになります。一般的な翻訳モデルでは得られない、業界固有の言語、用語、スタイルを加味して、ユーザーのニーズに合う高品質な翻訳結果を得られます。
なお、カスタマイズされた翻訳モデルは、 Microsoft Translator Text API V3 を介して、既存のアプリケーションや Web サイトなどに統合可能です。
Azure AI Translator の価格
Azure AI Translator の無料アカウントと有料アカウントでは、使用できる機能が異なります。有料アカウントでは従量課金制が採用され、地域ごとに料金体系が異なります。以下に、日本で使用する際における Azure AI Translator の機能と価格をまとめました。
アカウントの種類 | 機能 | 価格(日本円) | |
無料 | 標準翻訳 | テキスト翻訳 | 毎月 200 万文字分を無料で翻訳可能(カスタム翻訳はトレーニングのみ可能) |
言語検出 | |||
二か国語辞書 | |||
翻訳 | |||
カスタム翻訳 | トレーニング | ||
有料 | 標準翻訳 | テキスト翻訳 | 100 万文字あたり¥ 1,515.851 |
言語検出 | |||
二か国語辞書 | |||
翻訳 | |||
ドキュメント翻訳 | 100 万文字あたり¥ 2,273.776 | ||
カスタム翻訳 | テキスト翻訳 | 100 万文字あたり¥ 6,063.401 | |
ドキュメント翻訳 | 100 万文字あたり¥ 6,063.401 | ||
トレーニング | 100 万文字あたり¥ 1,515.851 (トレーニングあたり最大 ¥ 45,475.501) | ||
カスタム モデル ホスティング | ホストされたカスタム翻訳モデルあたり毎月¥ 1,515.851 (リージョン単位) |
Azure AI Translator の API の種類
Azure AI Translator に搭載された API について、それぞれの機能を以下に示しました。
- Translate :ソース言語のテキストをターゲット言語に翻訳する
- Transliterate :ソース言語のスクリプトまたはアルファベットを、ターゲット言語で文字起こしする
- Detect :ソース言語を特定する
- BreakSentence :ソース言語のテキストについて、単語の切れ目を検出する
- dictionary / lookup :ソース言語の特定の語句をターゲット言語で翻訳する
- dictionary/examples :ソース言語の特定の語句について、ターゲット言語における文脈での使用例を提供する
Azure AI Translator の使い方
Azure AI Translator を使う際は、サブスクリプションの登録が前提となります。サブスクリプションへの登録の流れと、テキスト翻訳の流れを簡単に紹介します。
利用するための前提条件
Azure AI Translator を利用する際は、 無料の Azure サブスクリプションに登録する必要があります。まず、以下のものを用意してください。
- Microsoft アカウント
- 認証コードを受け取る電話番号
- 本人名義のクレジットカード
クレジットカードは本人確認に使用されます。無料分が終了して従量課金制に進む場合は、登録したカードで決済されます。
必要なものがそろったら、以下の手順でサブスクリプションに登録してください。
- Microsoft アカウントでサインイン
- Microsoft Azure にアクセス
- 「無料で始める」をクリック
- 表示されたサインイン画面に、 Microsoft アカウントでサインイン
- プロフィール情報を入力
- サインアップに成功したら「ポータルに移動」をクリック
- Azure Portal が表示される
テキスト翻訳の流れ
テキスト翻訳の流れを、「リソースの作成」「動作確認」「アプリ構築」の順に解説します。
リソースの作成は以下の手順で実行します。
- Azure portal で「 Translator 」と検索し、「作成」を選択
- 「リソースグループ」「リージョン」「名前」「価格レベル」を選択
- 「確認および作成」をクリック
- サービス条件を確認し「作成」をクリック
- 「リソースに移動」をクリック
動作確認は以下の手順で実行します。
- 「リソースに移動」をクリックした先で、ソース言語のテキストを入力
- ターゲット言語への翻訳結果を確認
アプリ構築は以下の手順で実行します。
- 「リソース管理」 で 「キーとエンドポイント」を選択
- 認証キーとエンドポイントをコピー
- 任意の Web API ツールを立ち上げ、事前にコピーした自分のデータを使ってデータを書き換える
- 翻訳したいテキストとターゲット言語を設定する
Azure AI Translatorで言語の壁を取りはらおう
Azure AI Translator は、 Microsoft 社が提供する Azure における AI サービスの一つです。サポートする言語は 100 以上で、簡単なテキストから複数かつ複雑なドキュメントまで、リアルタイムに翻訳できます。ユーザー独自にカスタマイズされた翻訳モデルの作成も可能です。
Azure AI Translator を利用するには、 Azure サブスクリプションへの登録が必要です。まずは無料アカウントに登録して、翻訳機能を試してみてください。