同時通訳機能など ICT ツールの活用で広がるグローバル コラボレーションの可能性ーMicrosoft FEST 2015 を振り返って

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By R K
投稿日: 09/29/2015
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9 月初旬に開催された Microsoft 主催の 「FEST 2015」 は皆さん参加されましたでしょうか。魅力的なセッションの数々に加えて革新的なテクノロジーを紹介するパートナー ブースも充実し、非常に有意義なイベントだったと思います。私もローカライズという立場で新たな発見があるかと思い、2 日目に参加してきました。いくつかセッションを回ったのですが、その中で最も印象的だった 1 つをここでご紹介したいと思います。

ICTツールの進化で変わる働き方

FEST 2015 のセッション『強い組織を育てる – 機動力を高め企業の成長を支える ICT 活用』では、ビジネスに求められるニーズに ICT ツールがいかに応えることができるか、また ICT ツールの進化によって働き方がどのように変化していくか、というテーマで、様々な分野で活躍する企業の IT 担当の方々がパネル ディスカッションを行うというセッションでした。

印象的だったのは、ICT ツールの進化に伴い組織や個人の働き方がよりコラボレーティブに、よりグローバルに変わってきている、という点でした。確かに Skype for Business などの導入により、場所や国、時間にとらわれないコラボレーションが可能になった現在の業務環境というのは、数年前でさえ考えられなかったものです。

このセッションではさらに、近い将来のワークスタイルとなるであろう形の例として、モバイル端末を使用した場所を問わない連携、さらに同時通訳ツールを使用した B to C のダイレクトなコミュニケーションなどを紹介する動画なども発表されていました。

ローカライズという立場もありますが、私は今回紹介されていた未来のコラボレーションにおいては、この 「同時通訳」 というサービスがカギになることは間違いないと考えています。今回は、なぜこのサービスが重要なのか、また果たしてこのテクノロジー実現可能なのか考えてみたいと思います。

これまでのグローバルなコラボレーションは英語ができることが前提

そもそもこれまでのビジネスにおけるグローバルなコラボレーションというのは、「社員が英語ができる」ことが大前提でした。どの国の出身者でも、国際的なビジネスの場では英語を使用することが常識であり、また逆に言えば、英語の分からない社員はいかに有能だったとしても国際社会の場に出てくることは難しい、それが今日の 「グローバル」 の現実です。 このような状況において英語の価値はますます高まり、結果として他の言語やその文化を否定するような偏重も珍しくありません。

しかし、このような画一的でフラットな価値観を世界中に強制する「英語至上主義」は、果たして本当の「グローバル」な状況と呼べるでしょうか。もちろんこれまでは、このような形を採らざるを得ない部分もありました。全ての人が英語以外の言語を駆使してビジネスを進めるのはほぼ不可能に近いからです。その意味においては、グローバルなビジネスが誕生した黎明期においてむしろこの 「英語至上主義」 が最も効率的な方法であったことは間違いないでしょう。

同時通訳機能の進化で広がるグローバルなコラボレーションの可能性

ICT テクノロジーの進化に伴い、これまで不可能だった本当の意味での「グローバルなコミュニケーション」 が生まれる可能性があると私は考えています。そして、そのために必須となる技術がこの 「同時通訳機能」 なのです。このソリューションがビジネス シーンに登場することで、これまでは難しかった非英語話者とのコミュニケーションが飛躍的に向上し、グローバル コンシューマー向けビジネスをはじめとするさまざまなシーンで革新的な変化をもたらすことは間違いないでしょう。

今回のセッションでは、このような未来は決して遠い先のことでないと強く感じることができました。過去 10 年で見ても、不可能だと思われていたことが ICT の進化によって今や当たり前のことになってきています。Google 翻訳をはじめとする機械翻訳の分野も、数年前に登場した当時は驚きをもって迎えられましたし、これらのソリューションが秘める今後の可能性は非常に大きいと思います。

問われるのは、同時通訳の精度

一方で、個人的に強く感じるのは、「同時通訳」 というテクノロジーは果たして実現可能なのか、という点です。例えば先ほど例に挙げた Google 翻訳は、登場時に課題とされていた 「翻訳の精度」 という点においては、正直未だ大きな改善がみられるものでなく、これは特に非英語のペアで顕著です。言語学的な文法面での処理で発生する問題により開発がなかなか進まないのかと推察していますが、やはり自然な訳文を機械で行うことは私たちが想像する以上に大きな壁なのだと思います。

このような現状で 「同時通訳機能」 が近い将来実現できるのかを考えれば、まだまだ前途は果てしないと言わざるを得ないでしょう。 とはいえ、これからの未来、よりシームレスでフレキシブルなグローバル コミュニケーション・グローバル コラボレーションを実現できるのか、そしてひいては本当の意味での 「グローバル化」 が誕生する日が果たして来るのかについては、この 「同時通訳機能」 が一つの試金石となることは疑う余地がないでしょう。

翻訳を生業とする私としては少々複雑な思いはありますが、ICT の進化で世界の人々がより豊かなエクスペリエンスを享受できるのか、大きな興味をもってこれからも見守り続けると同時に、この業界の一部としてこれからも携わっていきたい、そう思わせる今回のイベントだったと思います。

 

RK2

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