昔から、ハイテク業界で活躍するためには、一定水準のデジタル活用力が必要とされてきました。しかし、テクノロジーが急激に進化を続けるなかで、多くの従業員がその変化に取り残されつつあります。
今週の #O365 Hours では、Microsoft MVP にも認定され、現在はカルチャー&チェンジ ストラテジストとして活躍されているノア・スパークス氏を招き、従業員のオンボーディングにおいて組織が直面している課題と、トレーニングの欠如をテーマに意見を交換しました。ぜひこの記事で内容をご確認ください。
ゲスト: ノア・スパークス氏 Planet Technologies カルチャー&チェンジ ストラテジスト (ウェブサイトはこちら)
トピック:
- クライアント企業におけるデジタル スキルの一般的な状況
- 景気後退となると真っ先に削られる予算がトレーニング。現在、技術スキルとトレーニングで最もギャップが大きいのはどの分野か
- 技術スキルとテクノロジー導入の関係性と、企業が新しいツールやプラットフォームの迅速かつ効果的な導入・運用を目指すにあたって人材のスキル不足が及ぼす影響
様々なクライアント企業を見てきた中で、デジタル スキルの状況全般についてどのように感じていますか。
スパークス:多くの組織が楽観的すぎるように思われます。つまり、機能が進化している中で、自分たちの従業員がどれくらい機能を使いこなせるかについて、実情よりも遥かに過大評価している組織が少なくありません。しかし、残念ながら、そもそも従業員たちには業務の中でこういった機能を理解する機会すら与えられていないのが現状です。
そこで私が最近、企画と推進に力を入れているワークショップがあります。このワークショップでは、従業員それぞれが取り組んでいる業務プロセスとその進め方に焦点を当てて、同じタスクをより効率的に達成できる方法を解説しています。それでも、職場においていまだに不安を感じていたり、そもそも好奇心が欠如していたりするエンドユーザーは数多く存在します。既成概念にとらわれてしまっているのです。
バックリー:私は長年にわたり、生産性向上のヒントを伝えるセッションを行ってきました。大きなイベントで参加者が満員になったことも多くあります。それだけ人々は生産性に関する情報を強く求めています。シンプルなヒントで、仕事の進め方全体を変革できたという感謝の声をいただくこともあります。彼らが使っている製品には、業務に劇的な変化をもたらす機能が搭載されている場合もあります。それにもかかわらず、機能について周知されておらず、トレーニングも受けられていないというケースが実に多いのです。90 年代半ばから Excel を使っている私でも、新機能について頭から抜け落ちてしまっていることがあります。そこで大切になるのが、自分が慣れ親しんだ領域から一歩踏み出し、新たな機能について学び、どうすれば仕事の質を向上できるかを理解していくことです。
スパークス:人は自分がこれまでやってきた方法を信頼するものですし、そこから別のものに乗り換えるのに強いためらいを感じがちです。だからこそ組織は従業員に新たなテクノロジーを体験させ、現在使っているテクノロジーと同じくらい信頼できると実感させることが大切です。これができていなければ、従業員が不利益を被ることになります。
バックリー:おっしゃる通りです。また「Office の新バージョンにすぎない」、「ただのアップデートだ」と考えている企業も存在します。しかし、結局のところ、一番ベーシックな機能しか使わず、秘められた力をすべて活用しないままでは、自らに枷をはめているようなものです。
景気が後退すると真っ先に削られる予算がトレーニングです。現在、技術スキルとトレーニングで最もギャップが大きいのはどの分野でしょうか。
バックリー:コンテンツの生成でしょう。私はいつも、意欲のある人たちには書き方や話し方について学ぶことを勧めています。たとえ本人が「自分の意見は重要ではない」、「既に誰かが書いたことがある内容だ」などと思っていたとしても、その視点には価値があります。この視点をいかにうまく伝えるかというのは、間違いなく必須のスキルです。また、技術面でユーザーが抱える初歩的な問題を解決するためのコンテンツは常に必要とされています。
スパークス:世の中には、テクノロジーを使って素晴らしいことを成し遂げたいと思っているにもかかわらず、実行するだけの裁量や時間が与えられていない方が非常に多く存在します。組織がトレーニングのための時間を本当の意味で認めていないのです。「業務の妨げになる」という考えです。これは、組織のリーダーが見直すべき点ではないでしょうか。
技術スキルとテクノロジー導入の関係性についてはどうお考えですか。企業が新しいツールやプラットフォームの迅速かつ効果的な導入・運用を目指すにあたって、人材のスキル不足はどのような影響を及ぼすでしょうか。
スパークス:私たちは人間であり、感情のある生き物であるということを心に留めておくことが大切です。新しいテクノロジーを安心して試せるサンドボックスがなければ、自分の殻に閉じこもりたくなるのは自然なことです。人は愚か者だと思われたくないし、間違ったやり方を避けたいものです。新しいことに挑戦すると、何かを壊してしまうのではないかと恐れる人は多いでしょう。
バックリー:だからこそ、新しいことに慣れ親しめるように、無料のデモ用テナントを立ち上げられるデモサイト等のツールを活用することが重要です。Microsoft は、まさにこのような、ユーザーが思う存分練習できるサービスを提供しています。
また、組織が自分たちの基準について新入社員に一通り説明しておくことも大切です。自分たちが採用しているプロセスやタグ、そしてそれを使っている理由等について周知しておく必要があります。組織のツールの中核となる機能について、従業員が理解していなければなりません。
スパークス: おっしゃる通りです。プラットフォームを扱うためのスキル (デジタル活用力) の欠如は、プラットフォームの導入における大きな障害です。
バックリー:そうですね。すべての企業は、基礎的なデジタル活用力についてテストを実施し、従業員の理解度を把握して追跡していく必要があります。これは、とりわけ組織全体におけるテクノロジーの導入にプラスの効果をもたらします。Microsoft はライセンスの販売だけでなく、実際に使ってもらうことに非常に力を入れており、そのために様々なプログラムやリソース (FastTrack 等) を提供しています。こういったサービスを検討することで、よりスムーズな導入につなげられるのではないでしょうか。
※この記事は、米国 AvePoint で 2022 年 6 月 22 日付で公開された記事 “How the Lack of Digital Skills Are Hampering Adoption” の内容を日本語訳したものです。
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