【テクノロジーが支える『父親』としての役割】
私は人生において、ふたつの重要な責務を担っています。ひとつは AvePoint 共同創業者・共同 CEO としての役割、もうひとつは 4 人の子どもたちの父親としての役割です。
グローバル規模で展開する企業 の CEO として、家から長時間離れる必要も避けがたく生じます。しかし、最近のテクノロジーの発達により、家族と毎日のようにコミュニケーションを取ることができるのは嬉しいことです。
世界のどこにいても、妻から子どもたちの写真や動画を送ってもらったり、あるいは子どもたち本人と会話したりビデオチャットしたりと、時差が許す限りは家族の様子をうかがい知ることができます。
言うなれば、以前であれば不可能であった 「家から離れても、父親として子どもたちといつでもコミュニケーションできる」 ことが、テクノロジーの恩恵を受けて可能になっている、ということでしょうか。
たとえ子どもたちの近くに常にいることが物理的に不可能であるとしても、子どもたちにとってポジティブな存在、良い影響を与える存在でありたい – これは私ばかりでなく、子どもを家に残して働く、多くの親の願いであると思います。
【子どもが経験する「孤立」とストレス】
AvePoint は設立 18 年目と、まだ比較的若い会社です。このような企業の常として、ディレクターやカントリーマネージャー等、エクゼクティブ・重役といわれる役職の保持者にも、小さな子どもを持つ世代である父親・母親が多くいます。このため、親としてしばしば直面する問題に、時期を同じくして直面することも珍しくありません。
そして最近、複数のエクゼクティブが親として経験した困難から、ひとつの気づきを得ることができました。転勤や赴任先の変更などを経験した数家族の幼い子どもたちが、同じような症状を呈する病気にかかったのです。
子どもたちは共通して食欲がなくなる、眠らずにぐずる、気分が悪いと訴える等、最初はインフルエンザか、もしくは何らかの感染症と思われる症状を経験します。さらに症状が進行すると、嘔吐する、突然倒れるなど、日常生活を送ることが不可能になってしまう段階まで悪化します。
奇妙なことに、病院で検査をしても特定の原因がない、わからないというところまで共通していました。親にとっては、苦しんでいるわが子に何もできない、非常に悩ましい状態です。
最終的にわかったのは、この子どもたちはすべて、環境や文化の変化、友人たちや居住環境からの分離による孤立からくる、非常に強いストレス を経験していた、ということでした。
慣れ親しんできた環境からの分離、全く知らない世界での新生活、場合によっては使用する言語の変化などは、十分な準備をして臨むことができる大人にさえ厳しいものです。ましてや、小さな子どもたちにとっては、想像を絶するようなストレスを抱え込むような経験ともなりえます。
孤立によるストレスがここまで強烈に、肉体的な症状となって表れることを目の当たりにし、人間の 「つながり」 を求める本能がどれだけ強いのかを見せつけられた思いがしました。
しかし、このような 「つながり」 からの分離による苦しみを経験するのは、子どもたちだけではありません。ビジネスの世界に身を置く大人もまた、同じ理由で苦しみを経験することは決して稀ではないのです。
【「組織立て直し役」の孤立が失敗を招く】
パフォーマンスが悪化している部署や支社、場合によっては会社全体を立て直すため、鳴り物入りで「立て直し役」重役が雇用・抜擢されることは非常によくあります。本人の能力値からいっても、それまでの経験からいっても成功は間違いなしとの期待を、本人も周囲も抱きます。
しかし、このような人事が期待に反して失敗することは、私たちの個人的な経験からいっても、また 「高給で迎えられた『立て直し役』が、沈鬱な表情で退任」 という経済紙の記事やニュースのヘッドラインから読み取れる限りにおいても、多々あることです。
このような失敗の背景を少し調べてみると、興味深い共通点が浮かび上がります。このような重役は、しばしば 部門内から、また会社全体からの 「孤立」「コミュニケーションの断絶」 を経験し、本来の能力を発揮できない状態 に陥っているのです。
【コミュニケーション回路の確立は一日にして成らず】
これは、潤沢な投資・リソースを受けているはずのこれら「立て直し役」の背景を考えると、少々奇異にうつるかもしれません。しかし、この 「孤立」「コミュニケーション断絶」 は、それほど単純な話ではありません。その理由としては、以下の 2 つが挙げられます。
1. 「つながり」「絆」 や 「コミュニケーションの回路」 は、ある日突然作ろうと思い立って作れるものではなく、構築には長い時間と手間をかける必要がある
2. 「立て直し役」 として組織に参加した人間が 「仲間」 として迎えられることは、多くの場合困難である。組織に参加した人間が 「新人」 から 「仲間」「同僚」 になっていく通常のプロセスを経験しないため、孤立しやすい
「立て直し役」 として迎えられる重役は、例えば同じ組織で働くメンバーと給湯室で立ち話をしたり、気分転換にコーヒーを飲みに行ったりする機会も、時間も、ほとんどないのが現状です。
たとえ参加したとしても、自分たちを評価する立場として突然組織に参加した人間に対し、通常同僚同士が話すような調子や内容で会話する人間はほぼいないのが普通でしょう。
このような 「立て直し役」 と、立て直される側として弱い立場に置かれる一般の従業員たちの圧倒的な力の差を考えると、一般の従業員にこのような状況の変革を期待するのは酷です。
そうではなく、自分たちが率いる組織の声を吸い上げるコミュニケーションの回路を確立し、孤立を防ぐサポート システムを確立するのは、「立て直し役」 の同僚である重役、さらにはその重役の上長がリードすべきタスク、担うべき責務である と私は考えます。
しかし、組織内コミュニケーション回路の利点はそれにとどまりません。適切なコミュニケーション回路の存在は、以下のような点において、組織のすべての従業員にとってプラスになります。
- タスクの優先度や意思決定に必要な、業務や組織に関連する重要な情報を得ることができる
- 組織の目指す方向性にどのように貢献できるかを考えるために必須である、組織の最新ロードマップを把握することができる
- 組織の一体感を向上させることができる
【Microsoft 365 が拓く、コミュニケーションの回路】
AvePoint では、これらの目的達成のため、Microsoft Office 365 を大いに活用しています。私個人が子どもたちとの絆・つながりを、世界のどこからでも保つためにテクノロジーを利用しているのと同様に、AvePoint のメンバーたちは、Office 365 が提供するツールを、しばしば私の想像を超えるレベルで使いこなしてコミュニケーションを取っています。
例えば、AvePoint のメンバーたちは、デビューしてからわずか 2 年の Microsoft Teams を完全に使いこなし、AvePoint の組織内とも、またパートナーや顧客とも自由にコミュニケーションを取っています。
また、AvePoint の Yammer グループでは、世界各国のメンバーが「読んだ資料や目にしたニュース」「アドバイスが必要なメンバーへの協力」「成功した商談やイベントの共有、それに対する称賛やねぎらい」を日々書き込んでいます。
その相手は、これまで顔を合わせたこともなければ、所属する部署からいって一緒に業務を行うこともないであろうメンバーであることも、決して珍しくありません。「組織内サイロ」 という概念を、何の苦労もなしに軽々と超えていく姿勢がそこにあります。これは、やはり Yammer のような技術の恩恵といえるでしょう。
【コミュニケーション ツールの導入 「だけ」で解決しない問題】
しかし、ここで強調したいのは、ただ単にコミュニケーション ツールを導入した「だけ」では、このようなコミュニケーションの回路は生まれない ということです。通話アプリとスマートフォンを持っていたとしても、使わなければ子どもたちと会話することも、絆を保つこともできないでしょう。
ツールは、購入した「だけ」、持っている「だけ」では、何の役にも立ちません。組織内のコミュニケーション回路の確立は、特に上層部の努力、時間、そして実際のアクションなしでは不可能です。しかし、CEO として私は、努力にも時間にもアクションにも、それだけの価値があると信じています。
これを読まれている経営層の皆さん。皆さんはリーダーとして、2019 年に組織を率いる人間として、このテクノロジーの変化にどう向き合っていますか? テクノロジーの力で、自らが率いる組織の中にコミュニケーション回路を確立し、孤立を防ぐための努力をご自身でしておられるでしょうか?
コミュニケーション回路の確立と維持は、上に立つ人間として他人任せにはできない問題です。是非、真剣に取り組まれることをお勧めします。
(原文は AvePoint 米国本社掲載ブログ 「Fatherhood, Technology, and Cultivating Connection」より)